3度目のFirst Kiss
元々、お酒はあまり得意じゃないから、沢山の人が集まる飲み会は、どうしても気後れしてしまう。
それなのに、どうして今日に限って参加してしまったんだろう。

昨日の帰り、たまたま会社の玄関で生田君に会った。
私は仕事が終わり帰るところで、彼は営業から会社に戻って来たところだった。

「お疲れ様です。お先に失礼します。」

私がそう声を掛けて、生田君の横を通り過ぎようとした時、彼は私の腕を軽く掴んだ。

「お疲れ様です。広瀬さん、明日の飲み会には参加しますよね。」

「えっ、私は・・・。」

「駄目ですよ、参加しなきゃ。広瀬さんは仕事頑
張ってるんだから、たまには会社のお金で楽しく
飲んでください。」

「私、お酒や飲み会はあんまり得意じゃないから。」

「大丈夫。僕が広瀬さんのこと、ちゃんと楽しま
せますから。」

私は、この言葉にほだされた。冷静に考えると、
生田君の気遣いで、私に声を掛けただけなのに、
舞い上がってしまった。

別世界の人と言いながら、結局、私もその他大勢の女子社員と同じだった。

いつもなら絶対素通りしてるはずなのに、生田くんの社交辞令に惑わされてしまったんだ。

まさか、こんな事態に追い込まれるとは思いもしないで。
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