3度目のFirst Kiss
次の日、フロントで待ち合わせしていた私達は、鍵をフロントに預けて、呼んでもらっていたタクシーに乗り込んだ。

今日も、後部座席に私と川口さんが座った。
2人だけに解る微妙な空気感。

生田君はタクシーが走り出すと、居眠りを始めたのか、体がらゆらゆらと揺れている。

川口さんが前を見たまま、小声で話しかけて来た。

「広瀬先輩、昨日の夜に言ったこと、私は本気ですから。決して、お酒の勢いとかじゃないです。」

「あっ、うん。」

「でも、心配しないで下さい。昨日も言った通り、私は公私混同はしませんので。仕事中は、展示会の成功のために、精一杯の努力をします。仕事でも早く生田さんにも頼られる存在になりたいですから。」

川口さんって、こんなに強かったっけ?
私の彼女への最初の印象は、下を向いて震えてる小鹿みたいだったのに。

川口さんは、恋愛を力に変えられるタイプなんだろうな。

「川口さんは凄いね。ちゃんと目標を持って仕事をしてる。私は、ただ、目の前のことをこなしてきた結果、今があるだけの気がする。」
 
「私は、広瀬先輩の仕事ぶりは尊敬してます。ただ、私は負けませんよ。いろんな意味で。」

川口さんの目には、力が漲っいた。
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