3度目のFirst Kiss

「バラした犯人は、田崎ですよ。あれは、完全に男の醜い嫉妬ですね。」

「嫉妬？」

「そうです、今日の夕方、生田君から北村リーダーに展示会終了の報告があって、それを北村さんが電話を切った後、嬉しそうに話したもんだから、皆んなが『さすが生田君！』みたいに盛り上がったんですよね。」

その光景は、容易に想像できる。

「それが面白くなかったんでしょ。急に、田崎の奴が『今回の展示会なんか、生田と広瀬さんの公私混同だろ。』とか言い始めて、そしたら、当然、皆んなが『何で？』ってなるじゃないですか。そこで、あいつが居酒屋での話をバラしちゃったんです。ホント、最低ですよね。」

奈緒子の田崎君の呼び方が、どんどん酷くなっていく。

「私、ああいう男が一番嫌い。本人達がいないところで何言ってんのって感じ。仕事で嫉妬したんなら、仕事で見返してやればいいのに。出来ない男の典型ですよね。」

奈緒子の怒りが電話越しにも伝わって来る。

「そっか。でも、きっと誰も信じてないよね。
さっき、川口さんにも『私は信じてませんけど。』って言われたし。」

「どうでしょうね。それを確かめるために、川口さんにも連絡が入ったんでしょ、きっと。その後は、私が仕事中に騒がない様に注意したから、その時一旦は、収まったんですけど、正直、噂が収まってるとは思えませんよ。」

「生田君は、その話を知ってるのかな？」

「さぁ、生田君は何か言ってましたか？」

「何も。」

「彩華先輩は、月曜日は代休でしょ？なら、それまでに生田君が収めてくれるんじゃないですか。生田君は彩華先輩を守るためなら、何だってしそうだし。それより、何か進展はありました？」

「進展って？」

「何、とぼけてるんですか？生田君との進展に決まっているでしょ。」

「別に何もないよ。川口さんには、ライバル宣言されたけど。」

「何ですか、それ！そちらはそちらで修羅場だったんですね。本当は今すぐにでもそっちに飛んでいきたいくらいですけど、今日は我慢して帰ってからゆっくり聞きますね。今日は、ゆっくり休んでください。」

「奈緒子、完全に面白がってるよね。」