3度目のFirst Kiss
私の理解の域を超えている彼の思考回路については、一旦、片隅に置いて、今の状況を彼に伝える事にした。

この状況を何とかすることが先決だと思ったからだ。

「今頃、部屋では、みんな、その話で盛り上がってるよ、きっと。」

「えっ、なんで？」

流石に生田君もこれは予想外だったみたいで、動揺している。

「田崎君がみんなの前で、『生田君がキスしてた。』
って叫んでたから。」

「えっ、田崎に見られてたのか。あいつ・・・。」

生田君には珍しく、失敗したという表情で
「チッ。」と舌打ちをした。

「じゃあ、広瀬さんのことも・・・。」

「さぁ、田崎君がみんなにバラしたかは知らない。私は、途中で部屋を出たから。バレてないことを心底願っているけどね。でも、田崎くんは、少なくとも、相手が私だった事は知っているわ。」

「そうですか。」

生田君は、項垂れて、その場に座り込んでしまった。
それから、小さな声で呟いた。

「ごめんなさい。広瀬さんを傷付けて。」

さっきの謝罪とは本気度が違う。
そんな風に謝られるだけで、私は何も言い返せなくなる。
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