3度目のFirst Kiss
「広瀬さんのしていることはそれだけじゃないけど、ここで言い出したらキリがないので。でも、俺は知ってますから。」

「大したことはやってないよ・・・。」

生田君は、また大きな溜め息を付いた。
ちょっとわざとらしくて、笑ってしまう。

「広瀬さんは、自分のことを過小評価し過ぎですよ。まぁ、後輩の俺にこんな事言われても、嬉しくないかもしれないけど、少なくとも、俺は広瀬さんのおかげで、いつも凄く助かっているのは事実ですから。そこは、田崎も一緒だと思います。」

私は、こんな風に言ってもらえて、素直に嬉しかった。

「ありがとう。そんな風に言ってくれて。」

思いがけない言葉に、泣きそうになった。
私も単純だ。

「こ、こちらこそ、いつもありがとうございます!」

生田君が、珍しく慌てふためいている。

「どうしたの?」

「いや、どうしたのじゃないですよ。涙は反則です。広瀬さん、ずるいですよ。」

涙は、まだ流れてない。ギリギリのところで留まっているのに。

「広瀬さん、とにかく、ここから早く出ましょう。
こんなところ、誰かに見つかったら、それこそ大変ですから。」

あたふたしている生田君を見るのは、何だか楽しい。

彼は、私の腕を掴み、お店の出口に向かって歩き出した。

私は酔っているのか、彼の強引さを許して、少し振らつきながら彼に付いて行く。
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