3度目のFirst Kiss
私達は、よく行く和食屋さんに向かった。
会社から近い割に、うちの社員がいることが少なく、夜は高級和食を提供しているお店なので、座席もゆったりして落ち着く。周りを気にせず、会社での愚痴も言い易い。

私達のオアシスだ。

早速、昼御膳を注文してお茶をすすった。
身体がゆっくりと癒されていく。

でも、今日の奈緒子はいつもと違うみたいだった。
癒されているというより、やる気に満ち溢れている。

「彩華先輩、本題に入りますね。」

「何?仕事のこと?」

「いえ、違います。仕事のことなら、就業中に聞きますから。」

「そりゃそうだよね。じゃあ、何かな?」

「先輩、前回の金曜日の飲み会で、生田君と何かありました?・・・と言うか、ありましたよね。」

奈緒子は既に、何か確信を持っている様だった。

私は、まさか、1週間以上前の事を奈緒子から追及されるとは思っていなくて、動揺を隠せない。

「先輩、もう動揺してますよ。」

そう言われても、私は否定を試みる。奈緒子のことは信用してるけど、そもそもどう説明していいのか分からないし、心の奥に仕舞い込んだことだったから、急に蒸し返されて戸惑ってしまう。

「えっ、何のこと?私と生田君に何があるって言うのよ。」

「先輩、誤魔化しても無駄ですから。私の目は欺けませんよ。」

彼女は不敵な笑みを浮かべた。

「先輩が言わないなら、私が言いますね。生田君が飲み会の時にキスした相手って、先輩ですよね。」

私の体温は一気に上昇し、顔が真っ赤になっていくのが自分でも分かる。

「やっぱり。確認事項は以上です。」

彼女は満足気な顔でまた笑った。いつもは可愛い顔が悪魔の微笑みに変わっている。

「あーっ、スッキリした。私、この一週間、先輩と話したくてウズウズしてたんです。でも、先週に限って忙しくて、仕事ながらタイミング悪過ぎてクライアントを恨みましたよ。」

彼女は私の答えを聞いてもいないのに納得したらしい。
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