3度目のFirst Kiss
今日の私には、美味しいはずのランチも楽しいはずの奈緒子との会話もほとんど上の空だった。

食事が終わると、小さなケーキとコーヒーが運ばれて来る。このタイミングもこのお店は絶妙で貴重なお昼休みの1時間を決して無駄にしない配慮を感じる。

「先輩、私の話を全然聞いてなかったですよね。
まぁ、そうさせたのは私ですけど。」

「ねぇ、私、飲み会の時、変だった?一週間以上も前のことだし、いまいち覚えてないんだけど。」

「彩華先輩、生田君とキスしたんですよ。覚えてない筈ないですよね。私なら絶対忘れないな。」

「何を言ってるの。奈緒子には素敵な彼氏がいるじゃない。」

「それとこれとは別です。だって、生田君は我が社の王子様ですよ。」

確かに、彼なら王子様のコスプレさえ似合いそうだ。

「とにかく、私から見れば、全然普通じゃなかったですよ。先輩って周りからは落ち着いてる人って思われてるかもしれないけど、そうでもないですよね。私はそういうところが好きですけど。」
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