3度目のFirst Kiss
「田崎、お前、キスの相手も見なかったのかよ?」

終わった筈の田崎君への追及がまた始まった。
話題の主人公である生田君がここにいないから、
仕方なくだったのかもしれない。

田崎君の斜め前に座っている営業社員が、再び、彼に視線を向けた。彼は、今度は、締めに出されたチャーハンをモグモグしている。急に話を振られて、それ飲み込むと、ビールを一口飲んでから彼は言った。

「それは、見ましたよ。」

「えっ!!」

まさかの答えに、聞いた方が驚いている。
周りの人達も、飲み物を吹き出しそうになっている。
それは、とても正しい反応だと思う。

私だって、心の中では、大声で叫んでいた。

「嘘でしょ!」

急転直下だ。一度は這い上がったはずの地獄の底無し沼へと、再び突き落とされた。

どうしよう・・・。

「見たなら、早く言えよ!」

「いや、聞かれなかったから。」
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