3度目のFirst Kiss
「では、川口さんは、どうかな?」

今度は、部長が川口さんに話を振る。

「私は、一通りの与えられた仕事をしていたつもりですが、まだ、スケジュール通りには終わってません。申し訳ありません。何とか、今日中に、終わらせます。」

川口さんは下を向いてしまい、極度の緊張と自分への不甲斐なさで、顔を上げられないようだ。
 
生田君が声を挙げる。

「自分のことでいっぱいで、川口さんのフォローまでできてなかった僕の責任です。彼女は新人ながら、一所懸命にやってくれてます。」

こんな風に自分のことをフォローされたら、女子は誰でもキュンとなるに決まっている。

「川口さんの仕事は、ほぼ終わってますよ。いくつか不明瞭な点があるみたいで、それは私が、会議の後、確認する事になってます。」

「そうかじゃあ、広瀬さん、よろしくな。それで、今回の会議で一番重要な山根さんの担当箇所はどうなってるんだ?」

部長は川口さんを咎める事なく、話を先に進めた。

「山根さんの部分は、既に広瀬さんが完璧に仕上げてくれてます。」

私の代わりに、生田君が答える。

「そうか、広瀬さん、ありがとう。君にも負担を掛けたな。」

「いえ、山根さんの段取りが完璧だったので、私は、それ程、何もしてません。生田さんからの最新情報を追加したぐらいです。」

ここで私が目立ってしまうのは、誰にとっても得策ではない。
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