3度目のFirst Kiss
なのに、会議の展開は思わぬ方向に向かい始めた。

「北村、それで山根さんの体調はどうなんだ?」

部長は、私たちのことは「さん」を付けて呼ぶのに、リーダー二人のことは、呼び捨てにする。

これって、一緒に働いてきた仲間だけの愛着なのだろう。だから、嫌な印象も受けない。

「山根さんは、今日は微熱程度まで下がってるそうですが、医者には過労だから、今週は安静にと言われたそうです。」

「安静か。じゃあ、展示会は無理だな。どうする?」

「本人は『展示会に行って、安静にしておきます。』と言ってましたが。」

いかにも、奈緒子らしい発言だ。私は思わず、吹き出してしまった。

部長も笑っている。

「さすがに過労になるまで働く根性がある人は言うことが違うな。しかし、会社としては、過労で倒れた人間を展示会に行かせて、万が一、大事に至っては困るからな。北村、お前が同行するしかないな。」

北村さんも部長命令には、逆らえないだろうと思っていた。

「いや、それが申し訳ないんですが、僕も木曜日に別件で外せない出張が入ってるんですよ。」

北村さんは、ここでも私へと同じ言い訳をする。
さすがに空気を読まない人は違うものだ。
< 74 / 129 >

この作品をシェア

pagetop