3度目のFirst Kiss
私は、梶さんの少し後ろを歩いている。

「梶さん、勝手なことを言ってすみませんでした。」

「前にも言ったけど、広瀬が謝る必要はない。でも、今回は、北村にしてやられたな。あいつは、最初から広瀬を出張に同行させるつもりだったんだ。」

「えっ、どうしてそう思うんですか?」

「あいつのことだから、先に部長に上手く言って、根回しをしたんだろ。そうじゃないと、今回のミーティングに、俺を招集する意味がない。ただの擦り合わせなら、広瀬一人で十分だった筈だ。」

「確かに、そうですね。北村リーダーって侮れませんね。」

「あいつは、今までも、そうやって仕事をして来たからな。まぁ、やり方はどうであれ、結果を残してるから、部長も強くは言えないだろうな。」

北村さんは、とんだ狸だ。

「それに、広瀬は、川口さんのことも必死に庇っていたかだろ。あれも、俺が、許可した理由の一つだから。川口さんのこと、折れない様にフォローしてやれよ。広瀬や山根さんの様に、川口さんにも成長してもらいたい。頑張れ、先輩。」

梶さんは、そう言いながら、私の背中を持っていた資料で軽くポンと押した。

「ありがとうございます。私、来週はいつもの倍、働きますから!」

前を歩く、梶さんに大きな声で宣言をする。

やっぱり、梶さんは最高の上司だ。別の課の新人のことまで、ちゃんと把握していて、私を通して、手を差し伸べる人だった。

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