3度目のFirst Kiss
夜11時を過ぎた頃、やっと、全ての準備が終わった。
準備が終われば、展示会の半分は終わった様なものだ。
当日は、マニュアルと流れに任せればいいだけ。
トラブルがあれば、対処するだけ。

油断さえしなければ、気を引き締めて挑めば、
緊張感を持って仕事を進めていけば、展示会はあっという間に終わってしまうんだ。


生田君も仕事が終わった様なので、今日はもう、手伝うこともないだろう。

家に帰ったら、明日からの準備もあるし、私は早々と、帰る準備を始めた。

「広瀬さんも、もう帰れますよね。もう遅いし、僕、送って行きますよ。」

「ありがとう。でも、いいよ。まだ、電車あるから。」

私は、気を引き締めるため、仕事への緊張感を高めるため、一人で帰りたかった。

私の頑な拒否に、生田くんは何も言わなくなった。
彼もさすがに疲れているだろうし、私以上に、明日からの展示会にプレッシャーを感じているだろう。

「では、お疲れ様です。生田君も早く帰って、休んでね。明日から、大変なんだから。」

「はい。明日からよろしくお願いします。」

< 80 / 129 >

この作品をシェア

pagetop