3度目のFirst Kiss
家に帰って、部屋着に着替えたところでほっとして、ソファーに座り込んでしまった。

明日からの出張の準備をしなきゃいけないのに、中々、立ち上がれない。

歳は取りたくないなぁ。
少し前までは、これぐらい平気だったのに。

後5分、後10分と明日の準備は取り掛かるのを
伸ばし伸ばしにしていると、携帯が鳴った。

奈緒子からだった。

「彩華先輩、ごめんなさい。私のせいでこんな事になって。」

「こんな事って。別に大した事じゃないよ。奈緒子が準備を殆ど終わらせてくれてたから、私は、最後の仕上げをしただけだし。」

「でも、出張も・・・。」

「そうだね。それより体調は大丈なの?連絡してなくて、ごめんね。」

「体調は大丈夫なんですよ。北村リーダーにも明日からは大丈夫だって言ったんですけど、途中でぶり返しても困るからって言われちゃって、言い返せなかったんです。確かに、出張に行ってしまったら、彩華先輩みたいに助けてくれる人もいないし。そしたら、余計に周りに迷惑を掛けてしまうと思って。」

本当は無理してでも展示会には行きたいはずの彼女が敢えて、我慢をしている。私達は、「頑張る」だけが仕事じゃないと経験から学んでいる。

「奈緒子の仕事振り、凄いよね。よくあそこまで詳細にまとめて、誰が見ても分かり易くて。あそこまで作り上げるの、かなり大変だったでしょ。本当は展示会の成功を一番に見届けるべきなのは、奈緒子だったのにね。」

奈緒子は、涙声をもう隠せないでいる。

「先輩、そんなに優しい言葉掛けないでください。私、本当は悔しいです。自分に腹が立って仕方がないです。でも、みんなに迷惑かけて、こんな事言える立場じゃないから。」

「何を言ってるの。みんな、奈緒子の頑張りもその分の悔しさも分かってるよ。少なくとも、私と生田くん、それに川口さんは。」
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