3度目のFirst Kiss
「ありがとうございます。そんな風に言ってもらえると、ちょっと救われます。」

「だって、本当のことじゃない。」

「でも、生田くんは分かりませんよ。何なら、先輩と4日間もずっと一緒にいれて、喜んでるんじゃないですか。」

「そんな訳ないじゃない!奈緒子のこと、あんなに信頼してるのに。」

落ち込んでると思って、励ましていたのに、話は思わぬ方向に進んでいく。

「先輩、出張中に何かあったら、絶対、報告して下さいね。」

彼女には、別のスイッチが入ったみたいだ。

「あっ、でも、川口さんには気を付けて下さいね。
多分、彼女、生田くんのことが好きなんで。今回の出張もチャンスだと思ってますよ。まぁ、生田くんは相手にしないと思いますけど。」

「出張は仕事なんだから。川口さんは、明日からの展示会でいっぱいいっぱいで、そんな余裕ないと思うけど。」

「先輩って、本当に天然ですよね。私、生田君に同情しますよ。」

私だって、本当は自分の気持ちに気付いてる。

「だって、生田君、彼女いるじゃない。私みたいな平凡な歳上女をそれこそ、相手になんかしないよ。」

「あっ、やっと、先輩の本音が出てきた!でも、彼女がいるとか、先輩は本人から聞いたんですか?周りの噂でしょ。気になるなら、ちゃんと本人に確かめた方がいいですよ。」

「別に気にしてる訳じゃないけど・・・。」

「恋愛に年齢は関係ないですよね。先輩には、過去のこととか、身体のこととかがあるのは、私も知ってます。でも、世の中、そんな男ばかりじゃないし、だから、敢えて言いますけど、先輩は、そろそろ、心の鎧を脱いだ方がいいです。」

「心の鎧か・・・。何か映画のセリフみたいだね。」

「私、彩華先輩には幸せになって欲しいです。先輩には、先輩次第で掴める幸せがあるのに。ここで逃したら、本当に一生、後悔しますからね。」

最初は、謝罪の電話を泣きながら掛けてきたはずの奈緒子に、結果、説教を受けている。
いつものパターンだけど。
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