3度目のFirst Kiss
新幹線が動き出すと、生田君は早速、鞄の中からマニュアルとクライアントとの打ち合わせを取り纏めた書類を取り出して、一部を私に、もう一部を後ろに座っている川口さんに渡した。

「川口さんも目を通しておいて。分からないこともあるかもしれないけど、現場でのミーティングの時に詳しく説明するから。よろしくね。」

今の生田君は、展示会を成功させることしか考えていない。

生田君は前に向き直ると、資料のページをめくりながら、今日の動きを確認していく。

生田君と私の担当を其々、割り振って、川口さんには、基本的に私のフォローに入ってもらうことになった。

名古屋を過ぎる頃には、全ての確認が終わる。
後は、今出来るのは、大きなトラブルなく予定通りに事が進むのを祈るのみだ。

私は、渡し損ねていたコーヒーを生田君に渡し、自分のミルクティーも袋から取り出す。

「すっかり冷めっちゃったけど、良かったら。」

「ありがとうございます。いっぱい話したから、喉カラカラだったんですよね。それに、朝から何も食べてなくて。」

私は、その言葉におにぎりも取り出して、生田君に渡した。

「コーヒーには合わないけど、良かったら食べて。今日は、お昼も食べれないかもしれないと思って、コンビニで買っておいたの。」
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