3度目のFirst Kiss
生田君はおにぎりを食べ終わると、大きくあくびを
した。

「広瀬さん、おにぎり食べたら、眠くなっちゃいました。ちょっと寝てもいいですか。大阪着いたら、起こしてもらえますか?」

大阪まで、後1時間程ある。多分、昨日もあまり眠れてないんだろう。

「いいよ。ゆっくりして。」

生田君が眠ってくれた方が、私にとっても好都合だ。
川口さんが、後ろにいると思ったら、仕事以外の下手な会話も出来ないし。

生田君は、目を瞑ると5分もしない内に、静かな寝息を立て始めた。

かなり疲れているんだろうな。
生田君は、眠っている横顔でさえ、まつ毛が長く鼻筋の通り、綺麗だった。

私は、携帯を取り出し、音楽を聴きながら、窓の外を眺めていた。

窓に映る川口さんも眠っている様だった。

流れていく景色が私にも睡魔を誘ってくる。

でも、私は眠る訳にはいかないな。
乗り過ごすと大変なことになる。

私は、睡魔と戦うため、ミルクティーを飲んだり、久々に携帯で動画を見たりしていた。

でも、到着まで30分程になった頃、一気に目が覚める出来事が起きた。

生田君が私の肩に頭をもたげて来たんだ。
もちろん、当の本人は、気持ち良さそうに眠っている。私の身体は、一瞬で固まり一気に目が覚める。

私は、生田君をはね除ける事も出来ず、固まった姿勢のまま、見ている動画で必死に自分の気を逸らそうとしたけど、そんな風には出来るはずもない。

私の神経の全てが、生田君がもたげている片方の肩に集中して、肩に心臓があるみたいに、ドキドキと体温が上昇していく。
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