3度目のFirst Kiss
その時、川口さんが戻って来てしまった。

彼女は、私に目を向ける事もなく、生田君の横にしゃがみ込むと彼の身体を揺すり始めた。

「生田先輩、もうすぐ大阪に着きますよ。起きて下さい。」

実際には、丁度、京都のホームに新幹線が滑り込むところだった。

「えっ、もう大阪。俺、凄くいい夢見てたのに。」

生田君は覚醒しきれてないのか、そう言いながら、
私の肩から頭を上げた。

「何言ってるんですか。乗り過ごしたら大変ですから。」

川口さんの作戦は、成功したようだ。

「あっ、本当だ、やばい。もう着いてる。」

生田君は京都駅と新大阪駅を勘違いしてる。

「まだ、京都に着いたところだから、大丈夫だよ。新大阪駅までには、後、20分ぐらいあるから。」

「何だ、良かった。川口さん、驚かさないでくれよ。」

「へへっ、すみません。私も勘違いしちゃった。」

彼女が可愛く笑う。
この笑顔に本気で怒れる男性はいないだろう。

「じゃあ、そろそろ降りる準備をしようか。新大阪に着く前に、お手洗いも済ませておいた方がいいし、
書類も片付けなきゃ。」

「そうですね。でも、ぐっすり眠れたおかげで、頭もスッキリしたし、身体も軽くなった気がします。」

京都駅でドアが開くと、人の出入りが多くなり、川口さんは通路にいることも出来ず、仕方なく、自分の席に戻った。

「僕、よく寝てましたよね。広瀬さん、迷惑じゃなかったですか?」

「えっ、別に迷惑は掛けられてないけど。生田君も疲れてるんだろうなぁとは思った。」

「僕のせいで、広瀬さんは眠れてないんじゃないですか。すみません。」

「私は、昨日の夜、ちゃんと眠ったから大丈夫だよ。」
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