3度目のFirst Kiss

生田君は、川口さんの気持ちに気付いているんだろうか。
私達の業界は、男女で出張や蜜に仕事をすることも多く、社内恋愛もよくある話だ。ただ、上手くいっている間は良いのだけれど、こじれると私が知っているだけでも、社内で修羅場なんて場面も今までに何度かあった。

私は、巻き込まれたくなくて、今まで、社内恋愛なんて絶対にしないと決めていたのに。

35歳にもなって、今更、こんな風に誰かに心を揺さぶられたり、巻き込まれたりするなんて思いもしなかった。

若い頃に思い描いていた人生とは程遠いな。
今頃は幸せな家庭を築いている筈だったのに。

コピー機からどんどん排出される印刷される用紙を
眺めながら、若い頃の夢なんてそんなものだと思いながらも、仕事に集中し切れていない自分を自嘲する。

私のミッションは、奈緒子の代わりにこの展示会を成功させることなのだ。