3度目のFirst Kiss
「お疲れ様でした。何とか明日を迎えられそうですね。」

生田君が私達にも労いの言葉を掛けてくれる。

「私、この展示会に参加させてもらえて、本当に良かったです。明日からも頑張ります。」

川口さんが、もう仕事が終わったかの様に話をして
いる。

「そうだね、現場感は普段の仕事にも役に立つからね。でも、まだ、残念ながら、私達の今日の仕事は終わってないよ。」

「えっ。まだあるんですか・・・。」

彼女のテンションが一気に下がっていく。

「そうね、変更点がいくつかあるから、それを修正しないとね。明日の朝の全体ミーティングまでに。」

明日は、朝9時から全スタッフでのミーティングをする。詳細は各リーダーに伝えてあるのだけれど、全体の流れや重要なポイントは、スタッフ全員で共有しておかなければならない。

今回は大規模なので、100人近くのスタッフが集まる予定だ。

一つのイベントを作り上げるのに、本当に沢山の人達の努力が積み重なって出来上がっていくんだ。ほとんどが裏方なので、日の目を見ることは少ないかもしれないけれど、終わった時の達成感には、毎回、感動してしまう。
だから、この仕事を辞められずにいるんだ。

「そうですよね。変更ありましたもんね。私、まだまだ、頑張れます。若いですから!」

最後の『若い』は余計だろう。

「生田さん、広瀬さんも仕事残ってるんですか?代わりに私が出来ることはありませんか?」

「えっ?」

川口さんの思わぬ提案に、生田君と目が合った。

「だって、広瀬さん、ここのところ、ずっと忙しくて残業続きだったし、たまには早く休んでいただいてもと思って。」

私は、生田君の判断を待つことにする。

「そうだね、確かに広瀬さんには、最近、ずっと残業してもらってるしね。だから、川口さんがフォローしてくれて、3人でさっさと仕事を終わらせてしまえば、早くホテルに帰れるよ。ありがとう、川口さん。」

生田君の返答は完璧だった。
川口さんに感謝して、でも、それ以上のことは言わせない。
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