恋はたい焼き戦争


私のことを「鈴ちゃん」と呼んだあとも、どれだけ周りの子から





「なになに、鈴と知り合いなの?」

「私のことも名前で呼んでよー」





と言われても彼は平生のまま、んー…?と誤魔化すだけだった。



女子はといえば紺野君と話すときはひきつった笑顔を見せて、私の方を見るときは殺気を帯びていると思う…



その場にいるのは本当にしんどかったけど授業が始まってしまうので席に座らなければならない。



予鈴が鳴って皆がぞろぞろと自分の席に戻っていくと紺野君は私の顔をじっと見始めた。



が、絶対目を合わすもんかと私は気付かないふりをかます。



──授業が始まって30分後。



私の机に小さく折られた紙が投げ込まれた。
…隣から。


それを開けてみると、


【まさか、こんなことになるとは思わなかったんだ。ごめんね】


と単調に書かれていた。


お昼の授業も終わり、やっと帰れる…
そう思った矢先。





「クラスの委員の高山、紺野に学校を案内してやってくれるか。
それから沢田も。隣のよしみだしな、よろしく頼む」





まさかの私指名ですか…


もちろんクラスの女子からは反対の声があがった。





「案内なら私が…!」

「沢田さんじゃなくてもいいと思いますが!」





さっきの「鈴ちゃん」事件?もあって私に案内させまいと必死だ。





「お前らは喋ってばかりできちんと案内しないだろー?
明日は移動教室もあるんだ、覚えてもらわないと困る」





せ、先生…ごもっともです。ごもっともですが…





「いや、私…」





そう言おうとした途端。





「わかりました!高山くん、り…沢田さん、よろしくお願いします☆」


と私に被せるように大きな声で言った。


しかも一回「鈴ちゃん」って言いかけたよね?絶対わざとでしょ!





「そうか、じゃあよろしくな」





先生は教室を出ていってしまった。


待って、私はこんな奴の案内なんて…!



残された私は周りからのいたーーい視線に耐えるばかりになった…

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