恋はたい焼き戦争


お父さんが来て少しすると、またしても畳を歩く音がする。

襖を開けるのはお母さん。

お母さんが来ると分かるとここにいる全員が頭を下げて出迎える。





「皆さん、おはよう」





母がそう言ってから





「美樹さん、おはようございます」





とそれほど声を張り上げずに挨拶をするのが鉄則。


体の弱い母が突然大声で挨拶されても驚かないために。


昔。初めてお父さんの元に子分がやって来たとき、その人数と挨拶の声とで驚いて気絶してしまったことがあるからだ。


お母さんはその後2日間寝込んでしまった。


お父さんはそれ以降二度とこのような事態が起きないようにお母さんへの挨拶はゆっくり、静かにするよう命じた。





「朝食の時間に遅れてしまってごめんなさいね…」





そう言うお母さんにお父さんは





「気にするな、体調が優れないのか?」





とお母さんのために毛布を取ってくる。





「ありがとう、少しね」





お父さんはお母さんのことが大好きだと思う。

顔を見ればわかる。


こんな組のトップをつとめる自分の元に嫁がせてしまった…という負い目もあるかもしれないけど、お母さんは娘の自分からしても魅力的な人なんだよね。

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