恋はたい焼き戦争
「あ、危なかった…」
「かえで君、ありがとね。
すごく…すごく強くなったんだね」
気付かなかったわけじゃない。
ただ見ようとしていなかっただけだ。
「最初はただ強くなりたかっただけだったのに、そのうち鈴姉ちゃんを守れるように…って頑張ってたんだよ」
「私、かえで君が逞しくなっていく姿を見て見ぬ振りしてた」
すると、かえで君はいつにも増して真剣な表情になる。
「前にも言ったけど…
もう弟みたいな存在でいるのは嫌なんだ」
「…うん。
でもそんな急には…」
「今すぐにとは言わない。
だから考えておいてほしい」
その一言を皮切りに私たちの間には言葉がなくなってしまった。
「…」
「…」
お互い何を話したらいいのか、会話する方法を忘れてしまったかのような感じ。