恋はたい焼き戦争
そんな沈黙を破ったのは
「にゃあ~ん…」
私たちの顔を見ながら通り過ぎた野良猫だった。
「か、可愛い!」
いち早く動いたのはかえで君。
実は無類の猫好きなんだよね。
「見て見て!可愛いよ!!」
さっそく、取り出した携帯で撮った写真を見せてくれる。
こ、これは可愛い…
というかあざとい!
完全にカメラ目線で、絶対私たちが可愛いっていうのわかってるでしょ…
なんというあざと猫…でも可愛い!
「可愛いね!
すごい人馴れしてるみたいだけど…」
「あ、あそこにポスターがあるよ!」
かえで君が指差した先を見ると、地域ボランティアのポスターが貼ってあった。
『ここの地区の野良猫に餌をあげないでください。
私たちが責任を持ってお世話しています』
その下には8匹の猫の写真と名前がそれぞれ書いてあった。
「この子は…メルちゃんっていうんだね」
「メルちゃん、またね!」
私たちが手を振ると、メルちゃんは行っちゃうの?って顔をした…ように見えた。
重い腰をなんとか上げて家に向かう。
さっきまでの雰囲気とは打って変わって、私たちはメルちゃんの話題で持ち切りだった。