恋はたい焼き戦争


「あれ、鈴ちゃん?」

「…!匠さん…」





お父さんの話が終わってから、頭を整理したくて少し外を歩いていた。


風に当たりたかった。





「なんか…元気ないね?」

「そ、そんなこと…ないですよ!」





私のその顔を見て、匠さんは顎に手を置きながら言った。





「僕に隠し事はしちゃいけないと思うなぁ〜」

「…!」





きっと、彼は私がいつもと違うことに気付いてる。


だけど…





「…ごめんなさい。ちょっと…言えなくて」

「そっか」





こんなこと、誰にも言えないよ。


…誰にも。





「…うん。そっか…
そういうこともあるよね〜お互いにさ」

「匠さんも…ですか?」

「そう。色々とね…」





伏せ目がちに視線を下に落として、一息ついた後に鈴ちゃんにならいいかな…と言った。





「今から言うのはただの独り言ね」

「え?…はい」

「僕ね、昴と似てないの」





悲しい顔を見て、思い出した。


初めて匠さんに会った時もこんな顔をしてた…


私が昴と似てないって言っちゃった時。





「血、繋がってないんだよね」

「…!?」

「僕と昴は本当の兄弟じゃないの」





私はあの時、なんて不躾なことを口走ってしまったんだ。


後悔がどっと押し寄せる。


私が何気なく言ってしまった言葉に匠さんは傷付いたはずだ。





「ご、ごめんなさい…!」

「…鈴ちゃんは何も悪くないよ?だから謝らないで」





そうは言っても…


私の中は匠さんへの懺悔の気持ちだけで埋め尽くされた。
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