恋はたい焼き戦争


「養子なんだ。昔は施設にいた。昴は小さい頃とても病弱でね…跡継ぎなんてなかなか考えられなかったんだよ。そこで僕を引き取った、ってわけなの」





…そんな。


じゃあ匠さんはコンノ・コーポレーションの跡継ぎになるために…?





「昴にはもちろん、慎ちゃんにも言ったことなかったのに…どうしてだろうね?鈴ちゃんには言いたくなっちゃった」





そう語る匠さんの目がすごく優しくて、何とかしてあげたくなったけど私じゃどうすることもできなくて悔しさが残った。





「でも…バレちゃいそうなんだけどね〜…」

「そんな…」

「昴が写真を探してるんだよ。鈴ちゃんと写ってるやつね?アルバムは一応隠してあるんだけどきっと見つかっちゃったら聞かれるよねぇ〜…何で兄貴は写ってないのって」

「…私のせい、ですよね。
お父さん同士が仲良くて、昔一緒に遊んだことがあるって聞いたから…すみません…!」

「そんな!謝らないでよ〜!
ただね、昴にはこんな苦労はかけたくないんだ…だから森ノ宮に編入させたの」





それって…やっぱり…





「ふふっ、昴ね最近楽しそうなんだ〜!
…ずっとそんな顔をしててほしかった」





兄貴を生贄にして逃げてきた…昴はそう言っていた。





「…昴なら。昴なら匠さんの思いを、ちゃんと受け取ると思います」





きっと、お互いに思いあってる兄弟だから。


ねえ、匠さん。

私が思っているより簡単なことではないかもしれないけど…それでももう少し昴を信じてみてもいいんじゃないんですかね。





「…うん。そうかもね…
でもバレないのが一番だよ。って…ごめんね、重い話になっちゃったね?」





向川部長が言ってたみたいに、私も匠さんたちの力になりたい。


心の拠り所になりたいって、そう思った。
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