Drinking Dance
思わず隣の星崎さんに視線を向けると、
「つらくて思い出したくないのに、自分の過去を打ち明けてくれてありがとうございます」

彼はそう言って、頬をさわっていた指を離した。

それと同時に、自分の頬が濡れていたことに気づいた。

どうやら私は泣きながら話をしていたようだ。

星崎さんはそっと、私を抱き寄せるように肩に手を置いた。

たったそれだけのことなのに、私の目から涙があふれた。

「本当につらかったですね」

「つらかったと言うよりも、何も言い返せないことが悔しかったです…」

「でも、よく耐えましたね」

「わかっていたら…ちゃんとわかっていたら、よかったのに…」

「それでも話してくれたことはえらいですよ」

泣きながら言っている私に、星崎さんは慰めてくれた。
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