Drinking Dance
私たちはお互いの唇を離した。

歯が…歯が当たった。

さっきの衝撃で血が出たのか、口の中には鉄の味が広がっていた。

「――イタタ…」

星崎さんは手で隠すように唇をおおっていた。

「ちょっと、急ぎ過ぎだと思いますよ…」

鉄の味を感じながら私は星崎さんに言った。

「僕もそう思いました…」

星崎さんは痛い痛いと呟きながら、フーフーと唇を尖らしていた。

「どうせキスをするんだったら落ち着いてからしてください。

急いだ状態でキスなんかしたら大事故ですよ」

そう言った私に、
「そうですね、反省します…」

星崎さんは呟くように言った。
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