Drinking Dance
私たちの間に沈黙が流れた。

気まずいから黙っていると言う訳ではない。

「――帰りましょうか?」

その沈黙を破るように、星崎さんが言った。

「――そうですね…。

もう遅いですし、ね…」

私は言った。

ベンチに置いてあったカバンを手に持つと、広場を後にした。

「駅まで送りますよ」

そう言った星崎さんに、
「ありがとうございます…」

私はお礼を言うと、彼と一緒に駅に向かって歩いた。

キスまでしたと言うのに、私と星崎さんは恋人同士じゃない。

それどころか、私は星崎さんに自分の気持ちすらも伝えていない。

もう上司として、仲のいい友達として、あなたのことを見ることができないよ…。

隣を並んで歩いている星崎さんの顔を私は見ることができなかった。
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