劇団「自作自演」
「可能性は、幾つかある。」私は立ち上がってフェンスに背中を預けた。
「きっと敦くんは、まず冷静になって、こう考えたんじゃないかな? 『解錠した用務員さんが異変に気付いて、先生を呼びに行き、この問題を無きものにした。』違う?」
「ザッツ・ライト。その通りだ。しかし、用務員は気付いてもきっとそんなことはしない。ヤツらはカギを開けるのが仕事なんだ。仕事を早く済ませて家に帰って昼間から酒でも呑みたいと考えるはず。めんどくせえことには、首は突っ込まないだろう。」
「私もそう思う。でも、こうも考えられない? 『こんなことが出来るのは、教室のカギを施錠、解錠する用務員しかいない。』って。探偵ならきっとそう推理するはず。」
「つまり、テメェの疑いを晴らすために、用務員自ら先公に報告した。それを見た先公は、問題になる前に消した。マスコミが嗅ぎ付けるかどうかは知らねえが、下手したら刑事問題にもなりかねねえ事態だからな。」
やっと冷静さを取り戻したようで、敦くんは、アスファルトの上で仰向けに寝転がった。
「でもよお、香澄さん。それにしては、時間が足りねえ。受刑者が登校してくるまでの短時間であそこまで綺麗に片付けられるとは思わねえ。」
「敦くん、リンゲルマン効果って知ってる?」