劇団「自作自演」
女子特有の愛想笑いで、うまい具合に断った私は、学校指定のダサいカバンを引っ提げて、教室を、眩しいキラキラした夢の国から逃げるように出てきた。
息が詰まる。水草の生えた水槽に金魚と一緒に入れられたような気分だ。
聞く話____これもカラオケを誘ってくれた友達から聞いた話だが。____によると、隣のクラスでは、いじめが起こっているらしい。
ターゲットになっているのは、私と同じ、「安全に、まっすぐ帰ろう!」でお馴染みの帰宅部、男子。
この男子のことは、よく知っている。1年の時、同じクラスで勉強そこそこ、運動音痴のいわゆる普通の冴えない男子だったが、彼の特徴として唯一挙げるとするなら、「アトピーである。」ということだ。
首から、恐らく背中まで皮膚が赤くなっていて、どこでもらったのかわからない軟膏は、まるでカレー粉を思わせるような匂いを放つ。
例えば、カレー屋さんなんかに居れば気にならないかもしれないけれど、人からカレーの匂いが漂うとそれは、異臭でしかない。
異臭。きっといじめの原因はそこにあるんじゃないかと思う。