劇団「自作自演」





青山くんは、英単語帳を開いているだけ。



読んでいない。覚えていない。頭に入れようとしていない。



ページをめくる若干の速度、英単語帳を見ている表情、目の動き……。



すべてが心ここにあらずといった感じで、別のことを考えている。



よく見ないとわからない。もしかすると、じっと見てもわからないほどの名演技だ。



何を考えているかまでは、わからない。ただ、ひょっとして、劇団「自作自演」についてのことを考えていたりして。



ひょっとして、ひょっとすると、私のことを想って、ニヤケ顔を無理矢理押し殺していたりして。



なんて、自惚れもいいところだ。



でも、気付かなかったな。まさか、あの青山くんが私のことを好きだったなんて。



青山くんなら、もっと相応しい人と付き合えるだろうに。私や敦くんとは真逆の思想を持った、それこそ平和主義者のお嬢様のような人と……。



私の列の1番前の席に座っている北條さんなんて、まさにぴったり。ベストカップルって感じがする。




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