劇団「自作自演」
「まあ、いいじゃないか。実は、僕にとっておきのシナリオがあってね。運が良ければ、この劇団『自作自演』の旗揚げ公演の題材になると思うんだ。」
「テメェが脚本書くわけかよ?」敦くんのコーヒーがやってきた。
「そういうわけで、坂本さん、少し昔話に付き合ってもらってもいいかな?」
「是非。」
本当はすごく興味があった。でも、それを露骨に顔に表すのは、少し恥ずかしかった。
「この話に題名を付けるとしたら、そうだねえ……グレアム・グリーンの小説、『情事の終り』を借りるか、谷崎潤一郎の小説、『痴人の愛』を借りるか……まあ、どちらでもいいし、どちらもなくていい。題名なんていらないかもしれない。」
「随分勿体ぶるね。」私は半ば呆れていた。
それを悟ったのか、青山くんは、コーヒーを一口飲み、一語一語絞り出すように話し始めた。