劇団「自作自演」
こうなれば止める理由はできる。
喧嘩で刃物を使うなんてやり過ぎだ。卑怯だ。ノーカウント。ノーカンだ。
しかし、正当な止める理由はできても、行動にはますます移せない。
ああ、できないさ。自分の身体にあの鋭いカッターの刃が少しでも当たれば、深く刺さってしまったら……。
痛い。そして、最悪の場合、死んでしまう。
いじめと同じなんだ。災害と同じなんだ。自分の身は自分で守るしかないんだ。
いざとなった時、犠牲になってまで守ってくれる人はいないんだ。
だから、高倉くんは、向かっていくしかない。松田くんも今更それを引っ込めることはできない。
女神様も迷ったことだろう。この状況で一体、どっちに向かって微笑めばいいのか。
その女神様の迷っている隙を狙って、悪魔が動いた。