劇団「自作自演」





こうなれば止める理由はできる。



喧嘩で刃物を使うなんてやり過ぎだ。卑怯だ。ノーカウント。ノーカンだ。



しかし、正当な止める理由はできても、行動にはますます移せない。



ああ、できないさ。自分の身体にあの鋭いカッターの刃が少しでも当たれば、深く刺さってしまったら……。



痛い。そして、最悪の場合、死んでしまう。



いじめと同じなんだ。災害と同じなんだ。自分の身は自分で守るしかないんだ。



いざとなった時、犠牲になってまで守ってくれる人はいないんだ。



だから、高倉くんは、向かっていくしかない。松田くんも今更それを引っ込めることはできない。



女神様も迷ったことだろう。この状況で一体、どっちに向かって微笑めばいいのか。



その女神様の迷っている隙を狙って、悪魔が動いた。




< 192 / 307 >

この作品をシェア

pagetop