劇団「自作自演」
松田くんの突き出したカッターは、ドラマのワンシーンのように、高倉くんの脇腹に深く刺さった。
その瞬間から、白のポロシャツはみるみる紅く染まっていき、高倉は脇腹を押さえながら、その場でうつ伏せに倒れ込んだ。
床が、松田くんの手が、僕たちの足元が、高倉くんの身体が、
高倉の身体に流れていた血で紅く染まっていた。
悲鳴が非常ベルのように鳴り響き、松田くんは、ふと我に返って、持っていたカッターをその場に落とした。
高倉くんとは対照的に、青ざめた表情の松田くんは、居ても立っても居られず、まるで、ずっと我慢していたトイレに行くかのように、背を向けて立っていた窓に近づき、そのまま飛び降りた。
下からも教室と負けないくらいの悲鳴が起こり、僕は慌てて窓に駆け寄って下を覗いた。
松田くんの腕と足が本来向くはずのない方向に向いていて、その目が僕の目を睨んでいる。
……アスファルトがやっぱり紅く染まっていた。