劇団「自作自演」
この時、僕は酒に強いということがわかった。
いや、もしかしたら弱いのかもしれないけれど、少なくともあの日は酔っていなかった。いや、酔っていたのに、それを覚ますほどの衝撃的事実を知ってしまっただけなのかもしれない。実のところ、わからない。
僕は親友のおかげだと思っていた。親友が2人に彼女との関係をバラしただけだと思っていた。
しかし、親友は何もしなかったし、何も言わなかった。
それどころか、彼女が勝手に仕組んだことだった。全ては彼女の言う、「うんざり」の一言で2人もの同級生であり、彼氏でもある男を殺してしまったのだ。
そのことに、彼女は、何も罪悪感を感じていないようだった。むしろ、「ああ、そんなこともあったわね。」という風に淡々としていた。
その彼女の態度、そして、もし僕が2人のうち、どちらかだったか、或いは、既に僕の知らないところで彼女に別の男がいると思うと、ゾッとした。
愛が憎しみに変わった瞬間、僕は生まれて初めて女を本気で殴りたいと思い、そう思った次の瞬間には、右拳に唸りを上げて、彼女の頬を殴っていた。
「……男は女には手を出せない。それは、身体の強さが違うからだ。しかし、心の強さに男も女も関係ない。この痛みは、死んでいった2人の痛みだ。」
彼女は、頬を擦りながら、立ち上がった。