劇団「自作自演」
「いいか? 香澄さん。アンタは今、クラスでオレからいじめを受けてることになってんだ。そして、ブラックボード作戦。アレが成功していたら……。」敦くんが青山くんを睨みつける。
「完全にそのことが浸透していた。しかし、それは頓挫した。親友様のせいでな。もう一度、あの作戦を実行しよう。」
「もう一度!?」思わずコーヒーを噴き出しそうになった。
「もう勘弁してよ。あんな思い二度としたくない。」
「文句なら親友様に言ってくれ。とにかくアレだ。ブラックボード作戦をもう一度やる。オレはそれを見てこう言う。『なんだ。全部本当のことしか書いてねえじゃねえか!』ってな。そして、クラスの出方を窺う。」
「クラスが私に対して、いじめるか、守ろうとするか、無関心でいるか。」
「その通り。」敦くんが手を叩く。
「まあ、オレの願いとしては、全員がアンタをいじめるか、無関心でいるかであって欲しい。それが出来るかどうかは、校内1の人気者、親友様にかかっている。」
「つまり、僕が親友に加担すればいい。そうすれば、少なくとも僕の支持者たちも加担してくれるか、無関心でいてくれるはず。」
そう青山くんが口を挟み、それから咳を一つして、
「ただ、勘違いしないで欲しい。僕はあくまで演技をするだけであって、僕が坂本さんに対して浴びせる罵詈雑言は、本心じゃない。」
私は、「もちろん、わかってるよ。」と返して、ふと誰かに見られているような気がした。
カウンターの方を見ると、アルバイトの女の人と目が合い、向こうは慌てて目を逸らしてきた。