劇団「自作自演」
「解釈だろ? 簡単さ。」
野崎くんはまるで、外国人のオーバーリアクションのように手のひらを上に挙げ、肩を窄める仕草をした。
「受刑者が、つまりはあのクラスがこうなればいいな。そういう願いみたいなもんだろ?」
「ご明察。」今度は、声に出して言えた。
「だってつまんないじゃん? いじめも事件も事故もない、問題のないクラスってさ。いじめはダメだって道徳の授業で散々習ったけど、だからってそれを18にもなろうとしてる高校生が律儀に守ってる方が、よっぽどバカっぽくない?」
「言えてるな。」野崎くんはまたあの笑みを浮かべた。
「社会に出てもいじめってやつはあるんだ。『いじめはダメだ!』って言ってる大人がいじめをやってるのが現実。」
「で、いじめてる本人たちはその意識がないから、いじめはないって言う。」
「そう。それで知らず知らずのうちにパワハラを苦痛に自殺する社員が出る。当事者は、それを朝、コーヒーでも飲みながら新聞を広げて初めて知る。寝耳に水って感じで。」
「でも、その方が面白いじゃん!」
私は野崎くんに負けないくらいの笑みを浮かべた。
「面白いよ、その方が。何もない日常には刺激が必要で、時としてそれは非道徳的なものじゃないといけないんだよ。特に私たち、青春真っただ中の高校生にとってはね。」