劇団「自作自演」
「それが自作自演?」
「自作自演さ。いじめなんてねえのに、いじめられているフリをする。受刑者どもは驚くだろうぜ? 『このクラスにいじめがあるんだ……。』ってさ。で、自分の身を守ることを考えるだろうよ。自分はいじめられないようにってな。」
「でもそれだと私は高みの見物ってわけにはいかないじゃん。思いっきり当事者になっちゃってるよ?」
「坂本香澄さん。アンタは、オレの見込み違いだったかもしれねえな。」
野崎くんは私の呼び方を「お前」から「坂本香澄さん」更には「アンタ」にまで変えてきて、まるで酔っ払いのように身体を揺らしている。
「いじめの一つもないクラスだぜ? 坂本香澄さん。そりゃ無視されたりはするだろうけど、その逆もあり得る。」
「逆っていうのは、つまりは、私に同情してくれる人?」
野崎くんは頷いた。
「悲劇のヒロインを演じて、周りがどういう反応をするか。どういう行動を起こすか。それをオレたち思う存分、楽しめるんだ。地味でだせえメガネ男子なんかが、ここぞと言わんばかりに正義感むき出しでアンタを助けるなんてこともあるかもしれねえ。」
「面白そう!」
その光景を後ろの席で見物してみたくなった。
いじめはループする。私から波状して、本来いるはずのない、いじめっ子が必ず出てくる。
いじめることに快感を得たいじめっ子が、他のターゲットを探す。そこから本来のいじめが起きる。中には不登校、自殺者、最後の項目である、『カッターを振り回して、殺人事件が起こるようなクラス』にもなるかもしれない。