劇団「自作自演」
「香澄さん。お前から仕掛けて来い。」
「仕掛ける?」私は首を捻った。
「そうだ。仕掛けるんだ。オレになんでもいい。仕掛けて来い。それもシコリの残る、インパクトのあるものを。」
敦くんは、具体案は言わなかった。演出家としてあるまじき行為だ。
しかし、演出家の指示されるままに動くのでは、人形で事足りる。
指示待ち人間。指示待ち演者。そんな役者は要らないし、才能がない。
役者は、演出家の意図、脚本家の意図を汲み取らなければならない。そして、それを自分なりにどう表現するか考えなければならない。
敦くんはそれを言葉ではなく、私にそう諭したのだ。