劇団「自作自演」
私は黙った。
そうだ。まったくもってその通りなのだ。
「あれだけの善良な市民だ。言葉では言うさ。「そうか?」とか、「いやいや、ないだろ。」ってさ。事実、そうだった。だが、思っていることと、言っていることは時として、合致しない。」
「表情に出るんだよね、人って。それも善良な市民の場合、それが如実に表れる。」
「そうだ。」敦くんは二度頷いた。
「それで、その結果は?」
「俯いてた。完全に動揺している証拠だ。オレが今朝、ンなことを言ったんだ。ヤツらも薄々気付いてたはずだ。いつその話になるだろうってさ。」
「典型的な現実逃避……か。」
「そう。現実逃避だ。頭を振ったんだ。そして、冷静さを保とうとし、別の話題に変わった。その話題も『次の授業なんだっけ?』という模範的な話題だ。」