劇団「自作自演」
「つまり、ブラックボード作戦を決行するのは、深夜。それも相手はセキュリティ会社だ。これは、目の前の敵よりも厄介だ。」
「敦くん、随分弱気だね。らしくないじゃん。」
「そうじゃねえ。冷静さを欠くとバカを見る。それにオレは『厄介』とは言ったが、『不可能』とは言ってねえ。」
やっぱり敦くんは、頭のキレる男だ。
まるで、私の考えをすべて理解した前提で、話しているような感覚に時々、陥るのだが、きっと、敦くんの『神様から与えられたギフト』がそれなんだろう。
「抜け穴がある。」
「ああ、まるで、落語の演目『抜け雀』のように、衝立に描いた雀が抜け出て、戻ってくるみたいな、そういう不可能を可能に出来る。相手はシステムで、そこには必ず抜け穴がある。それも古典的な抜け穴が。」
やっぱり敦くんは私の考えをわかっている。
たったこれだけの会話で、意思疎通できる私たちは、超人か、最強か、熟年夫婦か。
いずれにせよ、私と敦くんはほぼ同時に立ち上がった。