劇団「自作自演」





月明かりがこんなに綺麗だとは、思ってもみなかった。



よく月明かりで本を読むなんて描写を小説で見かけたりするけど、そんなこと出来るわけないじゃん! ってほくそ笑んでた自分が恥ずかしくなる。



でも、今こうしてその良さを知ってしまった以上、私はソクラテス。



「無知の知」になったわけだ。



謙虚さも兼ね備えた無知の知。



そして、きっとチョココロネを頬張っている敦くんは、私がこの時、「無知の知」になったことを知らない。



「無知の知であることの無知」なんだかややこしくなってしまった。



「敦くん。実は私もタバコ、吸ったことあるんだあ。」



「へえ。」



敦くんはそれっきり何も言わずにチョココロネを完食した。




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