劇団「自作自演」

屋上のフェンス越しに下を見ると、登校してくる生徒、朝練に精を出す生徒がチラホラ見えた。



きっともう誰か異変に気付いているはずだ。



敦くんは、「オレが先に行く。香澄さんは、５分後にでも来てくれ。」



そう言って、枕がわりにしていた学校指定のカバンを引っ提げ、屋上を後にした。



私が教室に着く頃には、きっと敦くんは万事上手くやってくれている。



私を見るなり、きっとほくそ笑む。



「なんだ？ ホントのことしか書いてねえじゃねえかー！」



なんて言って、しゃがれた声で愉快そうに笑うかもしれない。



序章。これは、序章の始まりに過ぎない。



ここから始まるのだ。卒業へと、青春の終わりへと続く階段の途中にある障害物レースが。



そして、壊れていく。絢爛豪華な模範的クラスが綺麗に、音を立てて壊れていく。



時計を見た。１分早かったけど、行くことにした。



興奮は時間のサイクルを早めてしまうらしい。デートの待ち合わせ時間に早めに来る男子の気持ちは、きっとこんな感じなんだろうな。