ベル姫様と溺愛ナイト様
ゆっくりと立ち上がって、女が見世物じゃねぇぞ、と周囲を軽く威嚇した。
人々はパラパラと散っていったが、まだまだ好奇心任せに見ている人はいる。

「おねぇ?」

おずおずと姉に続くように、立ち上がる少女。
その少女の動きに従うかのように、青年も立ち上がった。

「お前……」

「なんだ、女」

「お前はこの娘をベルと呼んだ。
どうして名前を知っている?」

腕を組んだ女店主は、先ほど殺されかけたことなど忘れたかのように、青年を睨みつけながら言った。

「当たり前だ、私が何年も何年も探し求めた姫だからだ。
お顔を、お名前を、覚えていないはずがないだろう」

女店主に、堂々と言い切る青年。
女店主は少し考えた素振りを見せ、今度は後ろの妹に声をかける。
< 14 / 260 >

この作品をシェア

pagetop