ベル姫様と溺愛ナイト様
彼は一瞬ぴくりと肩を震わせた。
大柄でいかついメロゥに話しかけられて驚いたのか、緊張は瞳だけではなく全身に回ってしまったようだ。

「そうですが……?」

どうもこの顔と体格で、毎回毎回無駄に驚かれて適わない。
俺、容姿で損してるな、相手にも悪いし。
と、メロゥが肩をすくめて苦笑いを浮かべたときだった。

あ、そうだ。
レイがぽんっと手を打った。

「ああ、店のご常連さんだ!
ジェミロのことが好きで見に来てるって言う、奥の席の……!」
「わ、わー、わーーーーっっ!!」

レイの言葉をかき消すように、さっきまでの緊張はどこへやら騒ぎ出す男。
よほど恥ずかしいようで、顔を真っ赤にさせて両手を大きく振っている。
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