ベル姫様と溺愛ナイト様
迷惑でないのならよかったと、シュシュは胸を撫で下ろし、くすりと微笑んだ。

静かな場所じゃなければ原稿を書けないくらいに繊細なら、そもそもこんなに賑やかな呑み屋の一室を間借りしたりしていない。
夜、部屋にいても店の賑やかさは伝わってくるのだから。

「書き手の性格にもよるとは思いますが、僕は割とどこでも書けるんです。
気分転換に、時々部屋以外の場所で書きたくなるんですよ。

公園とかカフェテラスとか。
講話で呼ばれた学園の待合室で書いたこともありますよ。
人の存在を感じながら書いていると、逆にアイディアが沸くこともあるんです」

「へぇ? そういうもんなのか?
じゃ、ま、問題ないってことなんだな?」

よく分からないけど、とでも言いたげに首を傾げるジェミロにシュシュが頷く。

「じゃ、全然良いわ。
ああでも、店開けるまでな」

言いながらジェミロは作業に戻る。

「さすがに開店後までここにはいませんよ」
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