ベル姫様と溺愛ナイト様
お金を払えばわたしをどうにかできると思っているなんて、どうかしている!
これではわたしが買われてしまうみたいではないか!
やっぱり嫌な人なんだ!
怒りの気持ちを言葉に乗せて、ベルは彼を責め立てた。

「だってさ、ナイトさんよ」

それ見たことか、とでも言いたげな瞳で、ジェミロは彼を茶化す。
う、と彼は言葉を詰まらせ、それから金貨をおずおずとしまいこんだ。

「……では、お邪魔は致しません……。
店の隅で良いですから、客として置いてください。
仕事が終わるまで、待たせていただきます」

しおらしくなったレイを、姉妹は暫く静かに見つめた。
それから、おもむろにジェミロが口を開いた。

「ふぅん?
邪魔しないなら、いいぜ?」

「おねぇっ?!」

驚いた顔で抗議してくる妹を、姉はまぁまぁ、と宥めた。
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