ベル姫様と溺愛ナイト様

「あ、ここ……」

あらかた城内の散策を終わらせた３人は、城を出てキョロキョロと歩き回っていた。
やはり先ほどとはどこか違う中庭で、突然ベルは立ち止まった。

ベルが足を止めたのは、一番大好きだった場所だ。

メロゥの記憶で完全に再現されている。瑞々しく輝く手入れされた芝生に、木々や花々。
綺麗に整備された通路。
セットされている優雅なガーデンセット……。

それらのどれもが、まだおぼろげながらも幼い頃の記憶の中にある。
中でもベルの一番のお気に入りは、中庭中心にそびえ立つ大木だった。

その木の目の前で、ベルだけでなく後ろの２人も眩しそうに大木を見上げる。

「ただいま……」

大木にそっと触れて、彼女は再度帰還の挨拶を口にした。