ベル姫様と溺愛ナイト様

青年はその言葉にがっくりとしながらも、彼女の肩から手を離そうとはしない。

「ベル姫様、お忘れですか？！
貴女のナイトを！」

「ん～～～……？」

何言ってるんだろう、この人？
姫？
ナイト？

ベルと呼ばれた少女は、首をかしげるばかりだった。
パーツの整ったお人形のような顔に、はちみつを練りこんだような腰まで伸びるブロンズが、かしげた首元からさらりと揺れる。

その姿があまりにも可愛らしく、そして青年があまりにも必死で、その場にいた町人達は目が離せなくなっている。

「やっぱりわかりません、そもそもわたしが姫なわけがありません。
では、失礼します」

少女は青年の前から立ち去ろうとしたが、それは許されなかった。
がっちりと掴んだ彼女の肩を、彼は離そうとはしない。