ベル姫様と溺愛ナイト様
「そうか……。
お前も大変だったんだろうに、5年もの間、姫を守ってくれていたのか。
礼を言う。
あと、夕刻町ではすまないことをした」

レイは、ジェミロに向かった頭を下げた。
先程までの敵対心は、消えていた。

「やめろ。
ベルはもう、あたしの本当の妹も同然だ。
姉が妹を守るのは当たり前だ、お前に礼を言われる筋合いは、ない。
あたしとベルは、家族だ!」

頭を上げろ、と、ジェミロは嫌そうに言う。
こんな、今日あったばかりの男に妹の面倒を見てくれてありがとう、と感謝されたくはない。

「……。
そうだな、姫を守れなかったナイトより、よほど頼もしい姉君のようだ……」

先ほどとは違って情けない顔を晒すレイ。
彼は、すっかり氷が溶けかけた酒を、ちびちびと口にしだした。
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